日本の製紙工場廃水に適用した例をご紹介します。
●排水の種類
製紙工場廃水
●規模
日量 約5,000 m3/日
●処理フロー
調整槽 → 生物膜処理槽(複数基)* → 加圧浮上
*生物濾過型(ウニ状プラスチック担体,礫状担体),浸漬濾床(漁網状担体)
●問題点
生物膜処理槽のBOD除去率が著しく低下
●原因
生物膜担体の肥厚(一部閉塞)
●「源帰」適用前までの対応
・微生物製剤の投入(バチルス製剤)
・曝気を用いた逆洗による付着物(肥厚生物膜)の剥離
■「源帰」適用後の変化
液体製剤「源帰L」を,濃度約0.5 mg/L になるように,調整槽に投入。
投入開始後,3~6日の間に生物膜担体の付着物が剥離。その後,1ケ月以内にBOD除去率が回復。
改善後の維持には、「源帰L」を連続添加(濃度は0.4 mg/L 未満),「源帰P」を間欠的に添加。
■「源帰」の効果か,微生物製剤の効果か?
「源帰」適用後も使用していた微生物製剤由来の菌が増殖しているかを,遺伝子工学的手法(DGGE)により調べたところ,微生物製剤由来の菌の増殖は確認できなかった。
微生物製剤の投入を止めた後,現在まで数年間生物膜処理槽の維持管理に「源帰L」と「源帰P」を欠かすことなく使っていただいている。
東北大震災の際は,「源帰」の生産・供給の停止がないか確認のお電話をいただいた。「源帰」が日常の維持管理に必須になっていることを知らされた。
【担体の種類と生物膜付着量について】
「源帰」により肥厚または閉塞を改善できた担体の種類は,浸漬濾床ではフリンジ型担体,漁網状担体,流動担体ではスポンジ担体等数種,生物濾過担体では空隙率が高いプラスチック担体等である。
担体同士が閉塞している場合,水流が当たる外側から崩れていって閉塞が解消される。
薄い生物膜を長期間維持することはこれまで実現が難しかった。そのため担体メーカーに限らず,水処理に携わる者が適量として考える担体上の生物膜量は下図-Bぐらいの状態であると思われる。しかしこの状態の生物膜量は多過ぎるのではないかと考える。
A B C
A:フリンジのほとんどを覆う
B:中心に近い部分が閉塞
生物膜厚が10 mm以上の部分が大半
C:閉塞がない.生物膜厚2~3mm
図 フリンジ型担体上の生物膜量のイメージ(横断面)
現状はフリンジ型に限らず担体の一部が閉塞状態になっていることが多い。閉塞部分から更に閉塞が広がり1年程度で生物膜処理担体としての機能低下が避けられない状態になっている処理施設が多く見られる。
図のCのような薄い生物膜が付着している状態が生物膜担体として最高の性能を発揮する状態であると考えている。